虫歯の治療
虫歯のはじまり方
「虫歯」のイメージは何でしょうか。 穴? 黒い色? 痛み?
たいして穴が開いてなくても、黒くなくても、痛くなくても虫歯が進行していることがあります。虫歯になった部分は、残念ながら元の健康な歯には戻せません。早く見つけて早く手当てすることが重要です。
歯は外側から、エナメル質・象牙質・歯髄(神経と呼ばれているもの)という構成になっています。
何らかの原因で、エナメル質や象牙質に欠損が生じることを『齲蝕(うしょく)』といいます。

かみ合わせの面にある溝やくぼみから虫歯が始まります。虫歯がエナメル質をつきぬけ、象牙質に達すると、広範囲に広がります。見た目では、溝が多少黒く見える程度でも、エナメル質の下はポッカリ何もないということもよくあります。

歯と歯の間にできる虫歯です。隣の歯と接触しているポイントの直下に始まり、やはり象牙質に達したところで広範囲に広がります。大人の場合は、深い虫歯があっても、しみるとか痛いとかあまり感じないこともあります。それでも、細菌に感染した部分が、神経に通じてしまったり、限りなく接近しているような場合、神経を取る治療に進みます。
若年者の場合、非常に深い虫歯では、いったん歯髄近くまで感染歯質を除去しお薬を置いて、新たな歯質が出来上がるのを待ち、その上で、最終的な処置を行うという二段階での治療もあります。
治療の方法
虫歯の治療は単純です。
まず虫歯菌に感染した部分を削りとり、その失った部分を人工物で補うということです。
虫歯菌に感染して軟化してしまった歯質は、元に戻ることはないため、きちんと除去する必要があるのです。虫歯菌に感染した歯質が残ったまま詰め物をすると、詰め物で覆われた下で、虫歯が広がってしまうからです。
さて、失った部分を補う人工物は、保険治療では白い樹脂かあるいは銀色の金属になります。
虫歯で失われた範囲の大きさ、歯の位置、咬み合わせの状態などにより、どんな詰め物・かぶせものが適しているかが決まります。
できるだけ白いものがいいと皆様御希望になりますが、保険の白い樹脂の場合、強度が不十分なので、割れたり、欠けたりする恐れがあるため、金属を選択せざるを得ないのです。
神経の処置について
“歯の神経”とは……
大雑把に神経といっていますが、神経や血管、それらをまとめるための結合組織の集合です。歯の神経があることで、歯はみずみずしさ・しなやかさを保つことができます。神経は、硬い歯の中に閉じ込められており、他の神経血管と通じる部分が、歯の根の先端(例えると針の穴よりも小さい部分)のみのため、菌に感染したり炎症を起こしたりすると、治ることは難しく、変質・変性し、ついには壊死していきます。
神経をとる処置になるのはどんな時?
- 虫歯が進行して神経にまで達してしまい、激痛がとまらない場合
- 事故などで歯が折れ、神経がむきだしになってしまった場合
- ふだん痛みがなくても明らかに神経まで穴があいている場合
このようなとき、神経を取った方がいいと判断します。神経を残しておいてもデメリットの方が大きすぎるのです。
では、とても深い虫歯で神経近くまで削らざるを得ない場合はどうでしょう?
まず、神経を保護する薬剤を使って神経を残して修復します。このような場合、詰め物・かぶせものをつけた後で痛みが出てくることがあります。
通常、時の経過と共に神経が新しい修復物に適応し、痛みがなくなっていきます。
ところがなかには、神経が適応しきれず痛みが止まらない場合もあります。このような場合は残念ながら神経をとる処置を行うことになります。
抜歯について

たった1本の歯であっても、大切なからだの一部です。
虫歯・歯周病・事故など、抜歯にいたる原因はさまざまですが、からだ全体が良い状態を保つためにはどうするのが良いのか、穏やかな生活を送るためにその歯があった方がいいのかどうかをよくお考えになっていただく必要があります。
その歯を抜いた場合、抜かない場合、それぞれのメリットとデメリットを明らかにして、最終的にご自身で判断していけるようお手伝いいたします。
当診療室では決して無理に抜歯をおすすめすることはありません。
抜歯をおすすめするのはどんな時?
- 虫歯が非常に奥深くまで進行し、根しか残っていないため、差し歯もできないような場合
- 歯が縦にまっぷたつに割れてしまった場合
- 重症な歯周病のため、歯根のまわりの骨がほぼ消滅し、このまま放置すると隣の歯の根のまわりの骨まで破壊されてしまいそうな場合
- 歯根の先に大きな膿の袋ができて根の治療をしても再発を繰り返す場合
- 存在している位置や向きが悪く、腫れたり病んだり他の歯を傷つけてしまう親知らず
などです。